【No.5】考具 加藤昌治著

 私見であるが、電博出身の方や、コピーライターの方が書いた本にはアタリが多い。文章や文体が独特で、かつ、ひとつひとつの言葉を拘りをもって選んでいる感じが、自分の肌に合っているのかもしれない。

 

 さて、今回読んだのはアイデア術について書かれたベストセラー本「考具」だ。著者

加藤昌治さんは、現在も博報堂で勤務されているアイデアマンである。

 

情報が入る→アイデアを拡げる→企画にまとめる

 つまり「拡げて絞る」。これが頭の動き方の基本原則であり、良い「アイデア」や「企画」を生み出す基本となる。

 大事なのが、アイデアを拡げる際はとにかく拡げまくることだ。一見するとくだらないと思ってしまうアイデアも含めて、とりあえず出せるだけ出し切ってしまう。とにかく奔放にやることだ。そして、出てきたアイデアをシンプルに「絞る」ことで、企画という形に落とし込んでいく。

 

 アイデアを生み出すための方法が知りたくてこの本を手に取ったのだが、読んでみると「絞る」ための手法、アイデアを企画にまとめ上げていく方法がためになった。

 

 出てきたアイデアを企画に仕上げていくうえで大切なのが「ビジュアライズ」だ。企画によって達成されるイメージを、立体的に描いておく必要がある。なぜなら「絵にならないもの」は企画として成立しないからだ。

 企画が実施されたとき、何がどうなっているのか?モノをつくるとするならどんな姿・形をしているのか?プレゼンをする自分自身がそれらをイメージできないことには、聞き手に企画を想像させることもできない。

 アイデアを企画にするときも、それを企画書に落とし込むときも、「ビジュアライズできるかどうか」を念頭において作業をすすめる必要がある。

 

 ビジュアライズについての項を読んでいて、元お笑い芸人の島田紳助さんが「話が上手い人は道案内が上手な人」と話していたのを思い出した。頭のなかで目的地への道が浮かんでいるから、順序立てて説明するのが上手いのだという。ビジュアライズする能力は、企画を生み出すだけではなく普段の会話でも重要な能力なのかもしれない。

 

 加藤さんが本著のなかで述べている「アイデアマン」とは、「自分の価値観や表現と社会を接続できる人」だと僕は捉えている。そういう意味では、小説家も音楽家も芸術家も一緒だ。日常のなかで絶えずアイデアの種を集め、アウトプットし続けていく必要があると再認識した。

 

 まずは、ノートに自分のアイデアをちょっとずつ書き連ねていく考具「アイデアマラソン」から始めてみる。

 

考具 ―考えるための道具、持っていますか?

考具 ―考えるための道具、持っていますか?

  • 作者:加藤 昌治
  • 発売日: 2003/04/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)