【読書メモNo.2】「ラン」森 絵都

 誰もがなにかしらの不安や不幸を抱えている。

それでも、なんとかして突き進むしかなく、不幸の克服、そして前進の過程を「走る」という行為のなかで描いた作品なのかなーと感じた。


 どれほどの不安が押し寄せても、目を背けたくなるような出来事に遭遇するなかで、頼れるのは自分の身体と心持ちひとつ。結局は自分が物事をどう捉え、どう行動するかなんだよな。自分の状況を憂うまえに、覚悟を決めて、ひとつずつ自分が出来ることをやっていこうと思える本でした。

 

 「死は美化できるけれど老いは美化できない」

 主人公が心をゆるす自転車屋の店主から主人公に宛てられた手紙にあったこの一文が結構印象的だった。「良い年の取り方をしたい」とか「老成」とかいうけれど、本当のところでは「老い」に対してプラスの意味を見出せる人はいないんじゃないかと考思う。死を受け入れることはできても、そこに至る過程を前向きに捉えられる人は限りなく少ない気がする。それは自分自身の生き様に関しても、他人の生き様を見ている過程でもそう。

 10年後、20年後の自分に満足することはあれど、そこまでの過程を受け入れられる人は限りなく少ないのかもしれない。だからこそ今日この瞬間、今日のこの1日を、懸命に生きていかなきゃならんのだろうなあ。 

 

 ちなみに自分は、走るのも歩くのも自転車を漕ぐのも好き。でも自分のペースで思考を進められるという点で、歩くのが一番好きかも。重要なのは「独りで」考えられる空間なのだと思う。意識的にそうした時間を取るようにしていかないとな。

 

ラン (角川文庫)

ラン (角川文庫)

  • 作者:森 絵都
  • 発売日: 2012/02/25
  • メディア: 文庫